Wannabe

僕はいつも、

『あちら側には一生行けないのだ』

と、思ってました。


ここ4,5年の間だったと思うんだけど、『リア充』『非リア』という単語が開発されました。皆が暗に気が付いていた『スクールカーストの階級』について、ようやくきっちりとした名前がついたんですが、差別の本場アメリカでは実はずいぶん前からこの『リア充』『非リア』にあたる単語が開発されていて、それは『ジョック』だったり『ターゲット』というものだったりします。というかもっと細分化されていて、パソコンオタクは『ギーグ』で、リア充になりたくてしょうがない三下が『ワナビー』と呼ばれていたりします。



ジョック - Wikipedia


実際のところ、アメリカにおける『ジョック』は『アメフトが得意なカッコイイ男』でマッチョ成分が求められるのに対して、日本における『リア充』は『会話が面白くてオシャレ』でありマッチョ成分がそれほど求められないという違いはあるにせよ、皆が暗に共有していた『リア』『非リア』という階級意識が1つの単語で定義されたことはとても面白いことだと思います。階級意識なんて考えているのは中途半端な奴だけで、当のリア充はそんなこと思ってもいない、という意見はまやかしです。僕の知る限り、階級意識については全部の人間が気が付いているはずです。それを殊更に気にするのが『ワナビー』であることは間違いではないけれど(最近ではワナビーに対応する単語も開発されていて、それは『キョロ充』というらしい)。

しかしなぜ、今の今まで『ジョック』『ワナビー』に相当する単語が生まれなかったのでしょうか。そこについてはハッキリいって全然わからなくて(考えてみたけど合点のいく結論が得られなかった)、階級という生臭い事象に対する嫌悪からの思考停止なのかとも考えたけど、まあ、あんまりしっくりはきてません。ただ、階級意識について語り得るのはワナビーだったり(つまりはキョロ充)、もしくはそれ以下のギーグやターゲット層(つまり非リア)の人間であって、確かに、自分からリア充を自称する奴は少なく、ネット上で階級意識について論する場合には、非リアを自称する自虐しか見受けないことに、ある程度のヒントがあるような気がしないでもないような……。これまで流行り言葉を産むことのなかったサイレントマジョリティ非リア層がコンピュータのおかげでネット上で発言するようになった、それで1つのムーブメントを起こすことが出来るようになったから自虐自嘲としての非リアという単語が使われるようになった……、うーむ、あんまりしっくりこないや。要再考。

ところでスクールカーストにはカースト内に含められないクラスタも存在します。それは『不良』だったり、『不思議少女』『ナード』といったりします。日本だとナードはきっちり非リアに分類されるんだけどなあ。ともあれ、アウトローへのドロップアウトサブカルへの傾倒は確かに日本でもカーストからの脱却手段としてよくよく用いられる行為であることには間違いありません。

僕が思うに、サブカルクラスタへ移行するのは3つの経路があります。

『趣味が高じてのサブカル化』
『恋人の影響でサブカル化』
カーストからの脱却=ファッションとしてのサブカル化』

文化の消費の仕方として正しいのは(正しいとかそんな判断が本当に必要かは別として、まあ本人が楽しむために一番適切なのは)もちろん1つめの『趣味が高じてのサブカル化』だと思うし、2番目の『恋人の影響でサブカル化』っていうのは特に議論する価値もないと思います。
カーストからの脱却としてのサブカル化』は特に元ワナビー、もしくは他の階級でも、劣等感を強く意識する人に多いかもしれません。カーストから脱却することでカースト特有の価値判断から脱離し、ジョックにはなれなくても特別な存在でありたがるためにサブカルをファッションとして楽しむ。それが楽しいかは別としてですが。サブカルチャーメインカルチャーの1つのジャンルみたいに扱われるようになったこの頃では、ワナビーの逃げ道としてサブカルチャーがお手軽に消費されているという考え方は少し穿ちすぎているのでしょうか。

ひねくれたことばかり書いている気がしないでもないけれど、それでも、そこにあるヒエラルキーには全員が気が付いている。僕らはいつだってそれを下から見上げているだけだけど。