面接会場の中心で社是を間違えて叫んでノケモノ

僕は大学院生当時、就活を失敗し、所謂無い内定になりました。こちらの面接では緊張のため志望動機がトび、あちらの集団面接では優秀な人間に圧倒される始末。確か志望者2名を同時に面接する形だったんだけど、面接の終盤でこんな質問をされました。


面接官「ここまでの面接で感じた、『相手の悪い部分』を指摘してください」
自分「え〜、そうですね〜、特に無いんですけど……あっ!少し猫背ですね!」


見た目をdisする始末。


今思い起こしても相当に酷いものでした。随分落ち込んだし、自分の面接スキルの低さとアガリ症に愕然としたことを覚えています。今でこそなんとか働き口にありついているけれど、それは元々駄目だったものが成長したわけではありません。運が良かっただけです。


今の就活に最も必要とされる能力はコミュニケーション能力だそうです。臆せずハキハキと喋る。行動力を示す。しっかりと目を見て、気の利いたコメントを返す。それが就活に必須と噂されている、所謂コミュニケーション能力です。

でも何かがおかしい。僕にとってのコミュニケーションはそんなものではありませんでした。

僕はハッキリ言って友人が少ないです。少ないし、その少ない友人も皆、ハキハキ喋ってガツガツ行動するような人間ではありません。どちらかというと自己主張が弱くて追従しがちだし、目を合わせずに会話するタイプばかりです。だけど、僕にとって彼らはキチンと友人だし、僕と彼らはキチンとコミュニケーションをしていたはずです。むしろ、『ハキハキして行動力があり目を見つめてくる人』は、僕にとって昔から苦手の対象だったし、そんな人と上手にコミュニケート出来た覚えがありません。腹を割られたことも、割ったこともないように思う。しかし、彼らは彼らのクラスタでコミュニケーションをして、そこでよろしくやっています。クラスタを横断して腹を割ることは出来なくても、それぞれの中ではキチンとコミュニケーションは機能します。


『ビジネスとしての会話能力』が一人歩きして『コミュニケーション能力』という言葉に置き換わって、それがイコール『リア充が求められている』というふうに勘違いが進んで、それだけならまだしも、ナードな層がジョックよりも劣っているという思考が一般化しています。でもそれって本当にそうでしょうか。僕は違うと言いたいです。リア充じゃなくても素晴らしい人生は歩めると思う。自分に相応しい相手や場所を選べられれば。

今問題になっていることはきっと、所謂『コミュニケーション能力の無い人間が就職出来ない』ということだから、ここまで書いたことは論点をずらしているに過ぎません。だけど、それでも僕は、僕のような目を合わせられないような小物同士で、ぼつぼつ仲良く出来たらいいなあと思っています。リア充じゃなくても。うーん。思考が女の子みたいですなあ。


リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)

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