3億円事件

宝くじで買いたいのは夢じゃないんだよなー。



昔、僕は宝くじのことが嫌いでした。何故なら期待値が低いから。宝くじは胴元の取り分が55%だから、買っても半分も戻ってこないんです。しかも買って仕舞って待って、あとは番号を確認するだけだからゲーム性も無い。だから全然面白くない。それなら控除率25%でゲーム性もある競馬をやってる方がまだ趣味として理解出来る分マシだと思ってました。

でもそれは違うのかなーと。


これは働き始めてようやくわかったことなんだけど、働くってことは本当に辛いです。それは作業の苛烈さや一日の拘束時間だけのことじゃありません。働かなきゃお金が無いし、お金が無ければメシを食うことも出来ません。しかも、一旦辞めると復帰することが難しいし、それが40年続けばもう僕らお爺さんです。
そんなときに考えてしまうと思うんです。「なんで俺こんなことしてるんだろーなー」と。それは希望に満ち溢れた未来とかそういうのではなくて、このまま働いて、食って、寝るだけのことに何がしかの意味を見出せないからなんだと思う。何かやりたいことがやれないからじゃなくて、やりたくないことをやるだけのことに。それがきっと、働くってことの本質的な辛さだと思います。
僕は今の仕事が楽しいですし、環境もホワイトだけれども、それでもそう思います。大部分のサラリーマンの人もきっとそう。やりたいことをやって、それが楽しくて仕方なくて、たとえお金が有り余っていてもやめたくない!なんて人はわずかなんじゃないでしょうか。


そこへきての宝くじ。
今のジャンボ宝くじの当選金は一等前後賞合わせて3億円です。この金額が実に絶妙。3億円あったら、とりあえず一生食ってくには困りません。贅沢しても無くならない程度。これが絶妙なラインなんだろうなー。簡単に言うと仕事辞めて遊んで暮らせるってだけなんですけど、それでも、それがすごく大きいことなんじゃないでしょうか。仕事辞めて、でもそこにリスクは全く無くて、食って寝るだけじゃない、やりたくないことだけをやるだけじゃない、そういった、大体のサラリーマンが抱いている大体の辛さが大体解消されてしまう金額、それがちょうど3億円。これが5000万円とかだったら、確かに小便チビるほどウレシイけど、それでも、それは辛さを解消する金額ではないと思います。3億。すげーな3億。



だから、宝くじっていうのは夢だけじゃないんじゃないかな。いや、夢として買っている人もいるんだろうけど、サラリーマンの人は、もっと、現実に自分を取り巻く辛さから逃れたくて、買っているんじゃないだろうかと。もちろん、現実の辛さを紙切れが解消してくれるなんてことは夢物語に過ぎないんだけど。それでも、宝くじを買いたくなる気持ちは、わからんでもないなあと思うようになりました。