Train Train
明後日資格試験があるんだけど全然勉強してません。
大丈夫なのか……。
で、現実逃避がてら1冊本を読む。
- 作者: 西村賢太
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/01/26
- メディア: 単行本
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平成の私小説作家!と銘打たれているだけあり、主人公貫多は(おそらく多くの部分で)作者自身。人足仕事で日銭を稼ぎ、父親が性犯罪者で人生積んでて、僻み、妬みを煮詰めたような性格の中卒です。そいつが、港湾仕事で出会った、まるで『陽』そのものの性格の日下部に話しかけられ、そこからなんか変わるかと思ったら何も変わらないというストーリーです。
だから、展開で押すタイプの小説ではないので、まあそれは置いておくとして、面白いなあと思ったのが、あまりの『むきだし』さ。一般的に『むきだし』というと鬼気迫る描写や、圧倒的なエログロを想像しがちです。不幸を嘆き、女を犯し、ドラッグにまみれる。もしくは、文学を意識するあまり、抒情的になりすぎる。しかし今作にはそれがない。貫多は、卑しい性格を持ち、それでいて、それを矯正出来ぬ不細工も持ち、それをポエティックな表現でマスクすることも、グロテスクに誇張することもありませんでした。ただただ、卑しく、みすぼらしく、僻んでいます。その醜悪さが素晴らしい。
一緒に収録されていた『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』も同様の内容。ただし、こちらは貫多が成長していて、40歳くらいになっています。もう作者自身の現在とほぼ同じ。小説家として、賞レースには何としても引っ掛かりたい、でも無頼の私小説家だったらそんなもの歯牙にもかけぬべきだろう、でもやっぱり賞は欲しい、とカッコ悪さもすべて含めて書いちゃうところ。もう凄く不細工。
クソさを丸出しにする物はとても貴重です。一昔前に、なにかの記事で『ブログのアクセスをアップさせる方法!』っていうのを読んだんだけど、そこにあったのが、
『インターネットの世界の中でくらい、好き勝手書いた方が良い!』
というものでした。丸出しにするのは怖いし難しいけど、顔の見えない世界でくらい、良い子でいることを忘れたら、それはそれで面白いもんが生まれるんでしょうなあ。もちろん、共鳴出来る人にしか価値は無いんだろうけども。