街が更新されていくこと

単車に乗って街中を流していると、通り沿いにあったコンビニが潰れていた。諸行無常。ライブのチケットを買うときによく利用していたコンビニだったので、少し寂しい気持ちになった。これからチケットを買うときには多少面倒だなあ、不便だなあ。クラッチを握ったままスロットルを回し、エンジンを少しだけ空吹かした。

そのまま駅前まで進むと、今度は、交差点の角に居酒屋がオープンしていた。鋪道に小さな黒板が立て掛けてある。開店フェアで生ビールとサワーが安くなっているらしい。近くの大学に通う学生が利用するのを当て込んでいるみたいだ。

しかし、この場所には、この居酒屋が建つ前に、何が建っていただろう。あれ、おかしいな。大学院まで含めて6年間も通った道なのにまるで思い出せない。居酒屋の隣には和菓子屋が連なっていて、その反対側の隣にはカレーチェーン、そしてその向かいには交番がある。交番の隣には中高生向けの学習塾がある。眼をつぶっていてもそれらの建物を思い出すことが出来るのに、居酒屋の場所に何があったのかは、忘れてしまった。

そういえば1年ほど前、あのコンビニのあった場所の近くにパン屋ができた。だけど、それ以前に、その場所に、何があったかはすっかり忘れてしまった。今、そのパン屋は、前からそこに在ったみたいに、街の景色の一部になっている。

街が更新されていく。だいたいの人がそれを上書き保存して、古いものを削除していく。