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良い喫茶店を見つけた。

自分は、日によっては3時間も4時間も喫茶店で過ごすことがある。だから、休日には、自分にとって居心地の良い店を探しに行くことがしょっちゅうだ。今日もいつも通り、僕は良い喫茶店を探していた。良い喫茶店は静かで、客が少なくて、店員との距離が遠くなくてはいけない。だから、というか、良い喫茶店は多分、儲からない。儲からないからあまり存在しない。あまり存在しないからこれまで見つけられなかった。

休みの日はいつもバイクで行動しているのだけど、今日に限っては、母から借りた自転車で繁華街まで買い物に出掛けていた。量販店で安い服を買い、昼には通り沿いの餃子屋で餃子を食べ、ニンニク臭い息を吐きながら、普段通らない、少し奥まった街路を自転車で進んだ。

会社が多く、平日はスーツを着た社会人で賑わっている辺りも、休みの日は人もまばらで、交通整理の係やこじんまりと立つセレクトショップの客と、たまにすれ違う程度だった。

足を休めて目の前に立っているビルを覗いてみた。上層にはいくつかの会社が入っていて、下層には飲食店や雑貨屋がテナントを借りている、いわゆるビジネスビルとファッションビルの中間みたいな建物だった。飲食店や雑貨屋はあまり流行っている様子が無かったが、恐らく、平日には、上層で働くサラリーマンで賑わうのだろう。

1階に在った喫茶店も、休日の飲食店とは思えないほど閑散としていた。静かで、客が少なかった。チェーン店の類いだったから店員との距離も近くない。理想的な喫茶店が思わぬところに在った。

少し、サボテンみたいだな、と思った。サボテンは日射しの強い昼間には太陽からのエネルギーを貯め込み、気孔を閉じて蒸散を抑える。そして気温の下がった夜の間に、貯めたエネルギーを同化して体を大きくさせる。

僕の座ったあの席も、いつもの昼間には、沢山のサラリーマンが入れ替わりに腰をかけるに違いない。サボテンと喫茶店は、光化学反応と同化を繰り返す。